庄司大輔(しょうじ・だいすけ)騎手=船橋
~デビューから24年で重賞初制覇~


庄司大輔騎手は8月6日に船橋競馬場で行われた習志野きらっとスプリント(1着賞金2100万円、1000m)で、メンコイボクチャン(牡6、父コパノリチャード、母ショウナンランパダ=アグネスデジタル、日高・ヤナガワ牧場生産、馬主・梁川正普氏、船橋・渡邊貴光厩舎)とのコンビで勝利。02年10月の初騎乗以来24年で重賞初制覇を果たしたことは大きな話題を集めました。
庄司騎手は山形県戸沢村生まれの41歳。父親が競馬好きで、子どもの頃から同県内にあった上山競馬場に連れていってもらっていたそうですが、当時は競馬に興味がなく、内馬場の公園で遊んでいた記憶が一番印象に残っているといいます。中学生になると競馬好きの担任の先生に出会い、小柄な体だったことや、雪深い環境でアルペンスキーやクロスカントリー、スノーボードなどのウインタースポーツで鍛えた体力があり、運動神経も抜群だったことで、騎手になることを熱心に勧められました。先生と会話を重ねるにつれ競馬への興味が芽生え、当初から上山競馬場の騎手になることを目指し、地方競馬教養センターに入所しました。
修了後は02年10月に上山競馬場の海方栄二厩舎からデビュー。ルーキーながら多くの騎乗馬に恵まれ、充実した日々を過ごしたそうです。「海方先生は騎手から調教師になってまだ数年の頃でしたが、いろんな方に頭を下げて馬に乗せてくれました。騎乗技術のある方で、調教で併せ馬をする機会も多かったですが、学ぶことがたくさんありました」と当時を振り返ります。
自厩舎には、のちに笠松競馬場から全国の舞台で大活躍したミツアキタービンが所属。庄司騎手は新馬戦(2着)に騎乗し、調教パートナーも務めました。「背中の感触は今でも覚えています。『何だ、これは!?』と思うほど素晴らしかったです。特に速いところを走らせると柔らかくてバネがあって、いいところしかありませんでした。当時はまだデビューしたばかりで何もわからずに乗っていましたが、後になって、この馬のすごさを実感しました」。
~騎手になって1年1カ月で競馬場が廃止~

順風満帆だった日々でしたが、03年11月に上山競馬場が廃止。騎手になってわずか1年1カ月の出来事でした。「まだ19歳で、廃止というのは現実味がありませんでした。海方先生のお父さんが、かつて船橋競馬場で騎手をしていたので、上山の冬期のオフシーズンに船橋で調教の手伝いをしていたこともありました。海方先生が船橋に行けるような流れを作ってくださり、本当に感謝しています。上山時代は周りもいい人たちばかりで楽しい思い出しかありません。廃止はとても寂しかったですが、次の場所でがんばろうとすぐに気持ちを切り替えました」。
~メンコイボクチャンとの出会い~


それから20年以上が経ち、メモリアルを刻むことになるメンコイボクチャンと出会いました。ホッカイドウ競馬デビューのメンコイボクチャンは、移籍後の23年5月に若潮スプリントを制覇。庄司騎手は24年10月から主戦を務め、コンビ10戦目での快挙でした。習志野きらっとスプリントは道中9番手付近を追走し、最後の直線で外から鋭く抜け出す快勝劇。11番人気の低評価を覆す圧巻のパフォーマンスでした。
「頭のいい馬なので、スイッチが入った時はとんでもなくすごい動きをしますが、リズムが崩れるとその走りができなくなる乗り難しさもあります。1000mはどう乗ろうかと考えてもその通りにはいきません。スタートしてすぐ狭くなり、いつもより後ろからの競馬になりましたが、それがしまいの伸びにつながったのかなとも思っています。抜け出すと遊ぶところもありますが、踏ん張ってくれました」。
さらに「追い切りがすごくよかったです。これまでも悪いわけではありませんでしたが、いい時は普段おとなしくてもスイッチが入るとゾクッとするような“いい意味の怖さ”がある馬なので、それが久しぶりに出てきた感じでした。馬場状態も、前が止まっていた開催だったので向いたと思います。重賞は全てが向かないと勝てませんが、この日は全てが向きました。馬の力にも助けてもらいました」。
口取り撮影では多くの騎手仲間が写真に入り、祝福の嵐となりました。「ナイターの時間帯なのに、早い時間にレースを終えた人たちも集まってくれて、本当に幸せでした。これまでも力のある馬に乗せてもらっても取りこぼしたレースもあって、自分の中では重賞を勝つイメージがわかなくなって、悩んだ時期もありましたが、あきらめてはいけないんですね」。当初はなかなか実感がわかなかったそうですが、多くの人から「おめでとう」と声をかけられるうちに、ここまでの勝ち星が多くはない自分に対しても「こんなにたくさんの人たちが見ていてくれていたんだとうれしかったです。重賞は一度勝つと、もう一回勝ちたくなりますね」と笑顔を見せました。
◆メンコイボクチャンを管理する渡邊貴光調教師が語る庄司大輔騎手への信頼 「これは船橋競馬場の人たちが思っていることだと思いますが、大輔は昔から騎乗技術には定評がありました。レースは、調教にも乗ってくれる人に頼みたいと考えています。どちらも丁寧に慎重に乗ってくれるので、オーナーさんのご理解もあって、ボクチャンもお願いするようになりました。重賞を勝った直後はあまり感情を出していませんでしたが、その数日後に会った時に『重賞を勝つってこんなにうれしいんですね』と言っていました。大輔もまたこれから騎手として頑張っていきたいと言っているし、ボクチャンがそのきっかけになってくれればいいですね」。
