5月に厩舎開業!大津剛(おおつ・つよし)調教師=船橋

~アクシデントも楽しめるように~

 大津剛調教師は今年5月に船橋競馬場で厩舎を開業。調教師としての仕事以外にも、様々な活動を行っています。

 東京都世田谷区下北沢出身の50歳。競馬には縁もゆかりもない家庭で育ちましたが、高校在学中に、競馬好きだった友人がきっかけで興味を持つようになったそうです。ホースマンを志したきっかけは、通学ラッシュで満員電車に押し込まれている生活から逃れるために、憧れだった北海道の牧場(千代田牧場)で働き始めたことから。繁殖でお産の手伝い、育成で初期馴致や調教などに携わり、現在の基礎になっている貴重な時間を過ごしたそうです。

 27歳から船橋競馬場の齊藤敏厩舎で働き始め、厩務員12年&調教師補佐10年。調教師試験は7度目の受験で合格しました。「今は何をしていても楽しくてたまらないです。もちろん大変なこともたくさんありますが、苦労があるのもわかった上で調教師になっているので、覚悟はできています。逆に、そういうアクシデントも楽しみながら乗り越えていこうと決めました」とキッパリ。

 現在は10馬房で厩務員は3名。「毎日のことなので、みんなで楽しく仕事ができればと思っています。船橋は完全な担当制が多いですが、うちも担当制ではあるけれど、全員で馬を見ようとプール制にしています。そのぶん、スタッフには休みをたくさん取ってもらって、仕事と休日でメリハリをつけています」。

~裏側を見たい~

 大津調教師は、千葉県調教師会の役員の1人として広報を担当しています。その活動の一環で、誘導馬の触れ合いの立ち合いに参加。船橋競馬場の誘導馬には、2017年のJBCクラシック覇者ミューチャリーをはじめ、リッカルドやエルデュクラージュといったゆかりの重賞ウイナーたちがラインアップされています。現在は誘導馬が9R、12Rの合間にウイナーズサークルに登場し、ニンジンなどを食べる素の姿を披露。大津調教師は、その様子やファンが見ることのできない誘導馬が馬房で待機している様子などをSNSなどで発信し、ファンサービスを行っています。「(SNSでの発信は)知ってほしいというよりも、ファンの方が見たいだろうなと思って始めました。一番は、自分が見たいからですけど」と笑顔。

 仕事柄、馬の素顔や馬房での様子は、いつも見ているのでは?と聞いてみると「仕事を終えた後、馬房にいるリラックスした馬たちを見る時間が好きです。誘導馬は競走馬とは違うので、新たな発見もあるんですよ。それが自分の知識となって、引き出しが増えるかなと思っています」と話していました。

 大津調教師がSNSで発信している馬たちの素顔は、ファンからも大反響。「そういう声はうれしいですし、ファンの方たちの目線は、いつも馬を見ている自分では気づかない発見をしてくださることもあるので、勉強になります」と目を細めました。

~船橋競馬場クリーン大作戦~

 船橋競馬場では『船橋競馬場クリーン大作戦』という10年以上も続いている活動があります。大津調教師は発起人の1人。ファンと関係者が一緒になって、船橋競馬場周りの清掃を行う活動で、重賞日の最終レース後に、最寄り駅のひとつでもある京成船橋競馬場駅までの歩道のゴミ拾いを行っています。今ではこの呼称がレースのサブタイトルにもつけられるほど。毎回20人以上のファンや関係者が参加しています。かつてはJRAの角居勝彦調教師も来てくださったことがあり、大津調教師も感激していました。

 始まった経緯について「ファンと関係者が接触するのはなかなか難しい世界ですが、何か一緒にすることも大事なことだなぁと思い、関係者と考えました。共通している思いは『船橋競馬場が大切な場所』であること。そこをきれいにするという思いをゴミ拾いでつなぐことはできないかという考えで始まりました。遅い時間帯のボランティア活動なのに、ファンの皆さんにはたくさん参加いただいて、本当にありがたくて感謝しています」。活動が根付いたこともあり、船橋競馬場周辺では、馬券やマークシート、競馬新聞などの競馬に関したゴミはほとんど見かけなくなったとも言われています。

 大津調教師が長きにわたって地道に活動してきたことは、多くの常連ファン、関係者も知っています。調教師として初勝利を挙げた際には、多くの方の祝福の声が飛び交い、大津調教師も涙し、その空間が温かさと優しさにあふれていました。

 今後はJRAや海外で勝利を挙げたいと、多くの夢を抱き続ける大津調教師。「僕たちは馬を仕上げる仕事ですが、最後のひと押しはファンの皆さんの応援が力になるとも思っています。たくさんの人たちに愛されて応援してもらえる厩舎にしていきたいです」と目を輝かせていました。