トレッドミルを用いた育成馬の調教効果判定

JRA日高育成牧場では、育成馬の調教効果を科学的に判定するため、トレッドミルを活用しています。トレッドミルとは、モーターで回転するベルトの上を馬に走らせるランニングマシンで、傾斜や速度を自由に調節して運動強度を細かくコントロールできます。近年導入する牧場が増えており、当場でも2016年と18年にそれぞれ1台、計2台導入しました。現在は主に疾患馬のリハビリや休み明けの馬の運動、強調教翌日の軽運動などに利用しています。トレッドミルの最大のメリットは、天候に左右されず屋内で安定した運動ができ、騎乗者が不要なため誰でも同じ運動条件を再現できる点です。研究の視点からは生理学的データの解析が容易になります。一方で、初期費用や維持費、防音対策が必要な他、馬が不慣れなうちは興奮して心拍や乳酸値の数値が高く出る場合があるため、事前に十分な馴致が必要となります。

調教効果や心肺機能の評価には、①血中乳酸濃度や②運動後に心拍数が毎分100拍を下回るまでの時間(THR100)③平均心拍数などの指標があります。当場では、これらを用いて運動能力変化を測定する「運動負荷試験」のプロトコル確立を目指して20年から試行錯誤してまいりましたが、25年にようやく血中乳酸濃度や心拍に関する変化が認められる強度に辿り着きました。
25年の試験では、1時間のウォーキングマシンでの準備運動後、傾斜6%で常歩、速歩に続き、秒速8mで60秒、秒速12mで120秒の駈歩を行うメニューを実施しました。12月と2月のデータを比較した結果、2月では①血中乳酸濃度が低下し、有酸素運動能力の向上が確認できました。また、②THR100も有意に短縮し、心肺機能の向上も認められました。③平均心拍数は若干上昇しましたが有意な差は認められませんでした。さらに、12月には試験を実施した53頭のうち6頭がオールアウト(疲労困憊で走れなくなる状態になる)しましたが、2月は45頭全頭が完走し、騎乗調教による能力向上も実感できました。

この結果から、今回の実施時期およびメニューが運動負荷試験として十分有効であることが分かりました。今後は宮崎育成牧場との比較や、心肺機能の向上が実際のレース成績に繋がるかの関連性を調査していく方針です。
日高育成牧場
業務課 水上寛健