水野貴史(みずの・たかし)調教師=浦和

~高崎から浦和へ~

 浦和競馬場の水野貴史調教師は、父が高崎競馬場で騎手&調教師として活躍した水野清貴さんで、双子の兄はJRAの水野貴広調教師という競馬一家。自身も高崎競馬場でデビューし、タイガーロータリー(北関東菊花賞Vなど)、デルマキングオー、テンリットル(両馬ともに高崎大賞典連覇など)、メモリーブロンコ(北関東ダービー&北関東菊花賞Vなど)ら、地元のスターホースたちの手綱を取ってきました。貴公子という異名もあり、地方競馬を代表する騎手の1人としても名をはせました。

 04年3月の高崎競馬場廃止後は浦和競馬場へ移籍。騎手時代の成績は地方通算2075勝(JRA1勝)。13年5月からは調教師に転身し、タービランス(羽田盃や埼玉新聞栄冠賞連覇など)やティーズダンク(戸塚記念やゴールドカップVなど)といった重賞ウイナーを手掛けています。「日々の調教はGPSなどでデータを解析して、状態がよくても追い込みすぎないように調整をしています。回復を促して、故障のリスクを防ぐように心掛けています」。

~Chill Field Horse Club、馬と一緒にのんびりと過ごすことができる場所~

 水野調教師は長年『管理馬の休養期間も自分の目の届くところに置きたい』という願いを抱いてきました。その理想を叶えるべく、埼玉県入間郡毛呂山にChill Field Horse Club(チルフィールドホースクラブ)をオープン。前身である乗馬クラブ・YSKライディングスクールの場所を引き継ぎ、代表を務める夫人とともに設立したこの施設は、木々に囲まれた緑豊かな環境にあります。『馬と一緒にのんびりと過ごすことができる場所』という想いがクラブ名に込められています。

 現在は自厩舎の休養馬のほか、乗馬部門では自厩舎の所属だったカネミツツイスト、タッカーキラリ、ヤバネらが、次のステージに向けてリトレーニング中とのこと。さらに、会員さんの自馬も含め11頭の馬たちが穏やかな時間を過ごしています。

 水野調教師は、毎朝2時から浦和所属馬が暮らす野田トレーニングセンターで管理馬の調教を見守り、競馬などがない日は車で1時間ほどの場所にあるクラブへ足を運びます。休養馬の様子を確認し、自らリトレーニング馬の乗りならしを行うほか、浦和競馬場の元誘導馬騎乗者でもある夫人やインストラクターともに、乗馬訓練に励んでいます。

 リトレーニング中のヤバネは、東北楽天ゴールデンイーグルスの吉井理人監督の所有していた馬としても知られています。水野厩舎でデビュー後はポテンシャルの高さで無傷の3連勝を飾ってJRAへ移籍。しかし、屈腱炎を発症し、現役を引退。「現役時代からとても大人しかったですが、今も変わらずいい馬です。乗馬としての適性も感じますし、最終的にはビジターのお客様にも乗っていただけるように育てていきたいですね」。

~馬とは死ぬまで一緒~

 競馬場とクラブを往復する多忙な毎日ですが、充実した日々を送っているという水野調教師。「今後もこのクラブは大きく広げるつもりはなくて、インストラクターを増やしたり、獣医師さんに常駐してもらったり、この場所の質は高めていきたいです。調教師をいつまで続けるかはわかりませんが、馬とは死ぬまで一緒なのでしょうね」とはにかみました。今後の抱負を尋ねると「これまでも重賞を勝たせてもらって、恵まれた調教師生活だなぁと思っています。特にこれ以上の贅沢は求めていませんが、現状に満足することなく、目の前のことをコツコツと積み重ねていきたいです」と、内に秘めた想いを控えめな言葉で表現してくれました。始まったばかりのクラブ運営とともに、水野調教師がさらにどのような馬道を歩んでいくのか楽しみにしたいと思います。