岩手県で期間限定騎乗中の船橋・山本聡紀(やまもと・としき)騎手

~重賞初制覇は山本3兄弟のワン・ツー・スリー~

 船橋の山本聡紀騎手は岩手県葛巻町出身の33歳。現在は地元の岩手競馬で期間限定騎乗中です。6月15日に水沢競馬場で行われた早池峰スーパースプリント(1着賞金400万円、850m)は、6番人気エイシントルペード(牡4、父エイシンヒカリ、母エイシンクローバー=キンシャサノキセキ、浦河・栄進牧場生産、馬主・平井克彦氏、岩手・板垣吉則厩舎)に騎乗し、逃げ切り勝ちを収めました。エイシントルペードはもちろん、2012年4月にデビューした山本騎手にとっても念願の重賞初制覇。

 山本騎手の2人の兄は岩手競馬のトップジョッキーたちで、この時の2着が4歳上の聡哉騎手、3着は7歳上の政聡騎手。山本3兄弟のワン・ツー・スリーという結果も話題になりました。「地元では普段から母や親戚、友達も応援に来てくれるのでうれしいです。平場では兄弟のワン・ツー・スリーはありましたが、重賞では初めて。3年前に亡くなった父もきっと喜んで、自慢してくれていると思います」。

 移籍初戦を飾ったエイシントルペードは、山本騎手が調教パートナーも務めてきました。「跨った時から背中が良くてパワーのある馬だなぁと思っていましたが、気性が本当に難しくて、ゲートも良くないと言われていたので、ゲートから出てみないとわからないところはありました。この時はイメージより加速してくれましたが、逆に行きたがったので、気分は損ねたくなかったのもあって、それなら行っちゃおうと」。

 スタート直後に前にいたのは人気を背負っていた2人の兄たちでしたが、外からスーッとかわして先頭に立ちました。「馬のリズムだけを考えて集中していました。人気の兄たちの馬をかわせば、850mのぶん、後ろから脚を使う馬はいないだろうなと思ったので、これは行けるかもと。勝った瞬間は喜びというよりも信じられない気持ちの方が強かったです。馬のパワーが抜けていたと思います」。

 7月13日に盛岡競馬場で行われた1200mの重賞・岩鷲賞もこのコンビで挑み、逃げ切り2連勝を決めました。

~師匠・佐藤賢二調教師との出会い~

 さかのぼれば、山本騎手は兄たちの姿を見て騎手を目指しました。「家は馬関係ではなかったので、兄が初めて馬に乗っている姿を見た時は驚きました」。高校卒業後に地方競馬の騎手学校・教養センターに入所。その頃、次男の聡哉騎手が期間限定騎乗で船橋の名門・佐藤賢二調教師の下でお世話になったことがきっかけとなり、山本騎手は2012年4月に佐藤厩舎からデビュー。佐藤調教師が20年5月に亡くなるまで、山本騎手もたくさんのことを学ばせていただいたと言います。「賢二先生から『お前は何回かに1回はスタート出遅れるもんな』とよく言われていたので、余計にスタートは気にするようになりました」。

 今となってはスタートの上手さに定評があるので「賢二先生は褒めてくれますかね?」と聞いてみると「褒める方じゃないです」と苦笑い。「でも、根はとても優しい方で、人間的にもすばらしかったです。馬に対しても向き合い方など数えきれないくらいたくさんのことを教えてもらいました。でも、いつまでも賢二先生にすがってばかりはいられないので、出会えたことは財産として、前に向かっていかなくてはいけないと思っています」。

~愛娘の存在が一番のモチベーション~

 山本騎手は身長146㎝で、騎手の中でも小柄。体型は岩手のリーディングでもある次男の聡哉騎手と似ています。そんな兄に少しでも近づきたいと、同じパーソナルジムに一緒に通い、体幹や騎乗フォームの改善を行っている最中とのこと。期間限定騎乗は延長して11月4日までの予定で、それまでにたくさんのことを吸収したいそうです。

 「岩手の皆さんも温かくて良くしてくださいますし、所属の板垣吉則先生も有力馬にたくさん乗せてくださり、本当に感謝しています。騎乗数が増えたぶん、その馬の走りやすいペース、リズムを崩さないようにということは、前よりもつかめるようになってきたと思っています。この期間で騎乗フォームの改善も含めて、もっと変わって上手になりたいです。昨年、娘が生まれましたが、馬に乗っている姿を見て『パパ』と言ってくれるようになりました。物心がつくまで乗っていたいというのが、今の頑張れる一番のモチベーションです」と微笑みました。