~デビューから1年2カ月で東海優駿制覇サンヨウテイオウと望月洵輝騎手~

 6月4日、名古屋競馬場で行われた第55回東海優駿(1着賞金1400万円、2100m)は、浦河町・鮫川啓一氏生産のサンヨウテイオウ(牡、父ルヴァンスレーヴ、母ブラックシンデレラ=ハーツクライ、馬主・上野孝展氏、原口次夫厩舎)が制覇。東海地区3歳王者に輝きました。

 ゴールの瞬間、ガッツポーズをして喜んだのは望月洵輝騎手。デビュー2年目の18歳にとって重賞初制覇がこの大舞台となりました。

 サンヨウテイオウとのコンビでは5月に駿蹄賞でクビ差の2着。ゴール直前まで先頭に立っていただけに、さぞ悔しかったのではと思ったのですが、数日後に会うと「ダービーで勝ちます!」と力強く宣言し、有言実行したのでした。

 「揉まれたくなかったので2コーナーを回って外に出して、そこで馬がハミを取ったので、早いかなと思ったけど、その気持ちに任せて行きました。日本ダービーを勝った北村友一騎手もおっしゃっていましたが、僕がダービージョッキーになったというより、(サンヨウ)テイオウがダービー馬になれてホッとしています」

 そう話す望月騎手は、昨年末にはヤングジョッキーズシリーズ(YJS)でファイナルラウンドに出場。中京第2戦をブービー15番人気のアイファースキャンで勝ち、総合2位に入りました。さらに今年に入ると、1月3日に地方通算100勝を達成。デビューから270日での達成は、飛田愛斗騎手(佐賀)が樹立した史上最速記録に惜しくも2日及びませんでしたが、デビューから1年間での勝利数を143とし、同騎手の持つ127勝の新人騎手1年間での最多勝利記録を更新。次々に活躍を見せています。

 これだけの活躍ができる背景には、どんな要因があるのでしょうか。僭越ながら筆者が感じる点をいくつか挙げたいと思います。

 まず一つは、騎手としての自分を客観視できている点。それは騎乗数の多さに表れています。

 昨秋は1日のうちほぼ全レースに騎乗という日も珍しくなく、今年は名古屋所属騎手では2位の騎乗数。1位の塚本征吾騎手は騎乗数全国トップでもあるので別格として、それに次ぐ騎乗数はたくさんの調教に乗っている証でもあります。デビューしたての頃、本人もこんなことを言っていました。

 「名古屋では調教に乗った馬はレースでも乗せていただけることが多い、と厩舎実習中に見て感じました。だから、デビューしたらなるべく多くの調教に乗ろうと考えていました」

 先輩騎手たちの方が騎乗技術は高いでしょうが、新人騎手だからこそ騎乗機会を得られることもあります。それは、3キロ減の恩恵であったり、こうしてやる気溢れる姿を見せて応援してもらうことも一つ。

 子供や孫くらいの年齢の少年が一生懸命に「調教に乗せてください」と頭を下げる姿を見ると、「じゃあ、この馬をお願い」と依頼する調教師が増えるのも納得です。事実、そうしてお願いした厩舎のほとんどが調教に乗せてくれ、そのままレースでの騎乗数へと繋がったのでした。

 そしてもう一つ、冷静さも感じます。それが垣間見られたのはYJSファイナル中京第1戦でした。地方競馬の多くの若手騎手にとってJRAのコースは直線が長いため、早仕掛けになりがち。「頭では分かっていても、普段と同じように3~4コーナーで仕掛けてしまいました」と、不思議なほどに同じ轍を踏んで悔しがる若手騎手を何人も見てきました。中京競馬場は、望月騎手が普段騎乗する名古屋競馬場より直線が100m以上も長いため、もしかしたら望月騎手も……と危惧したのですが、全くの杞憂となりました。3番手に先行し、勝った逃げ馬から半馬身差の2着で帰ってきた望月騎手は「じっくり構えすぎました」と反省したのです。これまでの若手騎手からはなかなか聞くことのできなかった言葉。負けはしたものの「何かやってくれる騎手かもしれない」と感じたのでした。そしてその反省を生かして第2戦で勝利。子供の頃から憧れていたJRAでの騎乗となれば舞い上がってしまいそうなものですが、冷静に切り替えられる性格に頼もしさを覚えました。

 東海優駿を勝ってウイニングランをし、喜びを溢れさせる姿は10代らしい初々しさがありましたが、こうした根底を持つ望月騎手なら、今後益々活躍してくれるのではないか、と期待をします。騎手人生は始まったばかり。これから山も谷も待っているでしょうが、どうかこのまま素質が真っ直ぐに伸びていくことを願っています。


大恵 陽子 (おおえ ようこ)

競馬リポーター。小学5年生からJRAと地方競馬二刀流の競馬ファン。関西を拠点に全国の競馬場で取材。グリーンチャンネル「地方競馬中継」、「アタック!地方競馬」出演のほか、優駿、競馬ブック、うまレター、netkeiba.com、地方競馬全国協会「LADIES JOCKEYS」などで執筆。