~20年ぶりに3歳馬優勝 佐賀・サマーチャンピオンと新たな取り組み~

 9月4日に佐賀競馬場で行われたサマーチャンピオン(JpnⅢ、1着賞金3000万円、3歳以上ハンデ、1400m)はヤマニンチェルキ(牡3、父フォーウィールドライブ、母ヤマニンプチガトー=ヤマニンセラフィム、新冠・錦岡牧場生産、馬主・土井肇氏、栗東・中村直也厩舎)が3番手から抜け出して優勝。北海道スプリントカップでの重賞初制覇から中2週で重賞連勝を決めました。3歳馬の勝利は2005年アグネスジェダイ以来。近年は重賞実績馬でも3歳馬は跳ね返されることが多かっただけに、大きな1勝だと感じます。

 地方最先着は3着のエコロクラージュ(牡6、父コパノリッキー、母バヤル=フレンチデピュティ、日高・坂牧場生産、馬主・原村正紀氏、兵庫・保利良平厩舎)。個人的にビックリしたのはハンデが53キロに恵まれたこと。高知所属のジュゲムーンが3歳ながら同斤量で、JRA3歳馬とは1キロ以上軽い状況でした。

 エコロクラージュのハンデは過去2回のダートグレード競走で掲示板外だったことが影響していると思われますが、昨年末の兵庫ゴールドトロフィーは4コーナーで前が壁になって全く追えず、今年3月の黒船賞は初の高知で深い馬場と普段とは異なる砂質のキックバックに戸惑ったことが敗因でした。

 園田・姫路競馬と異なる砂を顔に浴びることは苦手なようで、サマーチャンピオンもそれを嫌がって向正面では位置を下げましたが、ゴール前で鋭い伸び。「あと50メートルあったら勝てていた」と小牧太騎手は悔しさを滲ませつつも「もう一度佐賀に来たら、勝てる力がある」と力を込めました。このあとは馬の状態次第ではありますが、東京盃や南部杯が選択肢に入っています。

~全レース勝利騎手インタビュー~

 サマーチャンピオンに沸く約2時間前、検量裏が喜びとざわつきに包まれる事態が起きました。その理由は、佐賀第8レースでの1着同着。佐賀では今年度から全レースの勝利騎手インタビューをYouTubeショート動画(1分以内の規定)で配信しているのですが、それをどう収録しようか、というバタバタがあったのです。

 この取り組みが始まってからは初の同着。マイクは1本のみ、時間は1分以内と、制約がありましたが、いざ始まると出水拓人騎手と長谷川蓮騎手は笑顔で肩を並べ、2人で一緒にマイクを持ち、時間内に勝利の喜びを伝えることができました。

 このインタビューを担当したのは井上瑠香氏。宮崎県のケーブルテレビでアナウンサーをしていた頃、当時中学生だった長谷川騎手がジョッキーを目指す姿を密着取材したのが競馬との出会いでした。大学時代は陸上競技に打ち込んだこともあってアスリート目線で競馬や騎手を見られることは強み。佐賀競馬公式HPで無料掲載のネット新聞「うまかつ.net」にて全レースの予想印を打ち、週中は厩舎取材にも赴き、開催日には勝利騎手インタビューやパドック進行、表彰式司会など幅広い活躍を見せています。

 インタビュアーはほかに、専門紙・馬物語トラックマンでパドック解説も担当する永瀬将尚氏、取材や予想に加えて同世代のジョッキーとも打ち解けている若手有望株・寳藏寺律侑介氏の3名が交代で担当。

 インタビューまでの流れはたとえば井上氏の場合、リアルタイムでレースを見た後、リプレイを見ながら「伸びはどうだった?」など気になった点を走り書き。周りにいる調教師のやり取りも参考にしつつ、準備します。「なるべく早くファンの方に見ていただけるよう、1分以内に収めて編集なしでの掲載を心がけています」と、残り時間を意識しつつ、ジョッキーのコメントに合わせて追加質問を挟んでいきます。

 「加茂飛翔騎手は丁寧に話してくれるので、泣く泣く編集でカットすることもありますが、なるべく生の声を伝えたいと思っています」

 根底にあるのは「ファンの参考になれば」という思い。

 JRAファンと話していると、「地方競馬はやってみたいけど、馬も騎手も分からない」との声をたびたび耳にしますが、その一助となるのがこうした動画でしょう。

 時にはレースを見ていなくても「何コレ?」と気になって見てしまうインタビューもあります。その最たる例が真島二也調教師と石川慎将騎手の絡み。このコンビが勝った9月6日佐賀第2レースでは真島調教師が石川騎手の勝負服を着用し、2人で登場しました。そして騎手がインタビュアー、調教師が騎手のフリをしてのインタビュー。一見ただのおふざけのように思えるのですが、それぞれの立場で馬の状態やレース内容についてしっかり回顧していて、佐賀ファンにも初見の視聴者にも楽しめる内容となりました。

 「たまにですが、盛り上げたくてやっています。少しでも再生回数が増えてくれればと思います」と真島調教師。

 近年はきめ細かな情報発信が地方競馬にも求められています。この取り組みがさらなるファン獲得に繋がることを願います。