~兵庫サマークイーン賞完勝のヴィーリヤ 亡くなったオーナーへの思い~

 7月11日、兵庫サマークイーン賞(1着賞金800万円、園田1700m)をヴィーリヤ(4歳、父パイロ、母エメンタールベルン=ディープスカイ、浦河・上村勇人氏生産、馬主・菊池靖二氏、田中一巧厩舎)が勝ち、重賞初制覇を果たしました。JRA未勝利から兵庫に転入後、7連勝でのタイトル。

 それまでの6連勝は逃げ切り勝ちでしたが、距離延長となった今回は2番手からの競馬。道中は口を割るシーンも見られましたが、田中一巧調教師はこう説明します。

 「ハミ受けがわがままなところがあり、ハマりが悪い面がありますが、掛かっているわけではありません」

 この馬なりのリズムで運べていたのでした。振り返ると、前走では序盤から競りかけられながらも追わずに3~4コーナーから突き放しての完勝で、まだまだ底を見せぬ強さを感じさせられます。

 しかし、レース2日前には調教中にトラブルもありました。その影響で怪我をしましたが、調教師自ら乗って歩様を確認。問題ないと判断しての出走とあって、当日は返し馬を誰よりも入念にじっと見つめる姿がありました。

 そうした背景があっての重賞制覇。勝利を見届けた田中調教師は喜んだことはもちろんのこと、ポツリとこう呟きました。

 「生きてくれていたら、一緒に喜べたんですけど」

 その相手は、先代の菊池五郎オーナー。キクノの冠名で知られる同オーナーは2017年12月開業の田中厩舎にも愛馬を預けており、中でもキクノグロウは開業翌秋にJRA未勝利から移籍すると、2戦目から7連勝を遂げるなどし、最終的には重賞出走までステップアップしました。

 「あの馬からすごく認めていただき、開業からとてもかわいがっていただきました」

 田中調教師はずっと恩を感じていました。しかし、ヴィーリヤの兵庫移籍後に先代・菊池オーナーが逝去。兵庫サマークイーン賞当日は先代ご夫妻に手を合わせ、「力を貸してください」と胸の中でお願いして迎えたのでした。

~園田の元騎手が生産・育成~

 同じくキクノグロウをきっかけに先代にお世話になったのは、生産者の上村勇人氏。株式会社Maverickとして生産と育成の2部門を抱え、同馬が骨折して繁殖入りする際、手術後の立ち上げを担ったことから、オーナー所有馬の育成にも携わるようになりました。

 上村氏は08年4月に園田競馬場でデビューした元騎手。現役時代、重賞で唯一、掲示板に載ったのが兵庫サマークイーン賞でした(09年ミサトタッチ3着)。

 彼にとってもゆかりのあるレースを生産馬、それも生産1世代目のヴィーリヤが勝ったことは特別で、「安心したのと、お世話になった先代ご夫妻や携わった方々へ感謝の思いが込み上げました」と話します。

 騎乗したのは2年後輩の杉浦健太騎手。後輩から「太りましたね」と言われたことはご愛敬でしょう。ヴィーリヤのデビュー時には、騎乗した永島まなみ騎手の父・太郎調教師(元騎手)から「ありがとう。この馬、走るね」とすぐに連絡を受けるなど、園田・姫路で騎手をしていた時代の先輩・後輩との繋がりはヴィーリヤを通して強くなりました。

 そんなヴィーリヤの仔馬時代はというと、気が強く、母馬が寝ていてもお乳を飲みたければ「起きろ」と顔を蹴りに行くような女の子だったそう。「そんな仔馬、滅多に見ません」と上村氏は笑います。

 自社の育成部門に移ると、その気の強さはいい面を見せました。

 「普段はそんなにやる気を出す子ではなかったですけど、他馬と併せると行く気がありました。負けん気の強さを随所に見せていました」

 その気性がこうして重賞制覇にも繋がったのでしょう。

 ヴィーリヤは7月末時点で在厩で調整が行われています。次走については未定と田中調教師。どの路線を歩むにしても、走るたびに二人が思い浮かべるのは先代ご夫妻でしょう。

 なお、兵庫サマークイーン賞のレースレポートについては、ウェブハロンも併せてご覧ください。