厳冬期における子馬の飼養管理

 この原稿を書いている時期の日高地方では桜が咲き始め、春の気配が感じられるようになってきましたが、朝夕はまだ肌寒く、牧草の生育もまだ十分とは言えません。そんな中、JRA日高育成牧場で生産したJRAホームブレッドの1歳馬10頭は無事に冬を越し、徐々に逞しい体つきになってきています。1歳4月末の時点で、大きい馬では馬体重が400キロに達し、ここからさらに成長が進む季節を迎えます。

 JRAホームブレッドの当歳~1歳6月までの成長記録を、過去10世代(2016年産~2025年産)についてまとめました。図1は平均馬体重の推移を生まれ月(2~4月)ごとに示したもので、順調に増加していた体重が12月から2月の冬期にかけて停滞していることがわかります。体重増加の変化をより明確にするため、一日当たりの増加量(ADG)を示した図2を見ると、冬が本格化する12月頃からADGが低い値で推移し、春に再び上昇しています。

厳冬期にみられる成長停滞とその要因

 冬期に体重増加が停滞する理由として、いくつかの要因が挙げられます。第一に、放牧地の牧草量の減少です。冬になると牧草が育たなくなるため、放牧地での採食量が減少します。雪が積もれば採食はほぼ不可能となり、腸内容物の減少による体重低下に加えて、摂取エネルギー不足が生じます。第二に、厳冬期には体温維持のための熱産生が増え、消費エネルギーが大きくなります。外気に奪われる熱を補うためにエネルギーが使われ、その分、成長のためのエネルギーが不足しやすくなります。

 一方、骨の伸長を表す指標である体高は冬期でも緩やかに伸び続けます。図3は体高のADGを示したものです。体重と同様、生後間もない時期は成長が大きく、日齢が進むにつれて落ち着いてきます。体高の変化は、季節やそれに伴う栄養状態の変化には左右されにくく、遺伝やホルモンの影響により制御されていると成書にも書かれており、当場の結果もこれに一致するものとなっています。

 前述の要因で冬期に体重増加が停滞した馬は、春に豊富な牧草摂取が可能となり栄養状態が上向くと、代償的に急激な成長を示すことが知られています。これが骨軟骨症やウォブラー症候群などの発育期整形外科疾患(DOD:Developmental Orthopedic Disease)の発症要因になると考えられています。そのため、冬期の成長停滞を防ぐ対策はDOD発症を防ぐために重要となります。エネルギー摂取量を確保するために濃厚飼料給与量の増加や放牧地に乾草を撒くことが行われ、寒さによるエネルギー消費を抑えるためには馬服の着用や風雪を避けるシェルターの設置などが行われます。JRA日高育成牧場でもこれらの対策を講じていますが、それでも冬期には体重の伸びが鈍るのが現状です。それだけ北海道の厳冬期が厳しいことの表れでもありますが、できる限り滑らかな成長曲線を描けるような管理方法を今後も模索していきます。

日高育成牧場
業務課 調査役
竹部直矢