育成馬調教における走行タイムの設定

 JRA日高育成牧場では、毎年約60頭の育成馬を調教しています。調教のタイム指示についてはステディキャンター(馬が落ち着く速度で安定した駈歩を続ける)となるように設定することで、馬が常に落ち着いた状態で調教を実施することを心掛けています。今回は育成馬調教における走行タイムの設定についてご紹介いたします。

調教の基本となるタイム

 競走馬の調教では基本となるタイムがあると考えています。当場の竹部職員が研修に行った英国の名門マイケル・スタウト厩舎では、調教メニューをEasy(竹部職員がGPSで測定したところ18秒/F程度)、Normal(同15秒/F程度)、Work(同12秒/F程度)の3段階で設定していました(図1)。すなわち、休み明けの月曜日は軽めで坂路1本(18秒/F)、火曜日は明日の追切に備えて普通調教として坂路1~2本(15秒/F)、水曜日は追切(12秒/F)、木~土はまた繰り返すといった感じです。この18秒/F、15秒/F、12秒/Fという速度を基本にしている厩舎は多いです。18秒/Fは競走馬にとってステディキャンター(馬が落ち着く速度で安定した駈歩を続ける)となる速度であり、15秒/Fは血中乳酸濃度が4mmol/L以上となり無酸素運動能が鍛えられ始める速度、12秒/Fは追切すなわちレース実戦と同様の速度となります。

日高育成牧場のタイム設定

 日高育成牧場では、昨シーズンから通常調教(スピード調教以外)の走行タイムの設定を変更しました。23─24シーズンまでは4月のブリーズアップセールまで正比例するように走行タイムを上げていったのに対し(図2)、24─25シーズンからは走行タイムが1歳の12月までに18秒/Fになるようにどんどん速度を上げ、ベーススピードが18秒/Fに達してからはその速度を維持する形で調教を行いました(図3)。その結果、まずV200という心肺機能を示す数値が過去3シーズンと比較して高くなり、特に2月の数値が高いすなわち早期から心肺機能が向上していることが示唆されました(図4)。さらに、24─25シーズンの育成馬は6月の新馬戦で早くもデビューした馬が16頭と、過去5年平均の13頭と比較して多くなりました。以上のことから、ベーススピードを早期に18秒/Fまで上げることは、育成馬の基礎体力をつけるのに良い効果をもたらしたと考えられました。今後数シーズン続けてみて、検証したいと考えています。

 以上、育成馬調教における走行タイムの設定についてご紹介いたしました。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。

JRA日高育成牧場
業務課長 遠藤祥郎